サ キさんのチェンマイ日記

                     
 
■ 496■ 11月17日 2007

「土の家」

 最近、チェンマイで土の家を2カ所見学する機会がありました。

 そのうちの一つは、チェンマイ大学美術部構 内にある喫茶店Dです。以前からその存在が気になっていたのですが、土の家の喫茶店があり、日本人が経営して いるという話は家人から聞いていました。ミニコミ紙に土の家の見学会があるというので参加しました。

 この土の家は、以前美術部の学生が国際会議場にするために建設したものですが、長い間放置されていたのを、1年前大学から許可をもらって、修復、喫茶店 として使用しているものです。

 タイ人の建築家の話の要約は、エコー生活が叫ばれている現在、土の家は世界中で建築が進められているとのことです。まず、建築資材の調達で、森林伐採な どの自然破壊がないことが一番の利点だと言います。

 確かに、建築用木材資材の伐採は、世界各地で問題が深刻化しています。
 タイでも、以前は豊富にあったチーク材の伐採が進んだ結果、森林を消滅させ、毎年洪水が発生して被害を大きくしています。現在では政府の命令で、チーク 材の伐採は一切禁じられています。

 このチークは堅牢なことから、住宅の建材として古くから使用されてきました。今でもチェンマイ市内には、古い建物が沢山残っているのは、この堅牢さ故で す。

 次なる利点は、粘土と、砂と、おがくず・わら、水で作る土の家の材料は、どこでも簡単に手に入れることができます。だから建築場所を選ばず、どんな場所 にも簡単に建てることができます。建築資材を遠くから運搬してくることに使うガソリンや、運賃が必要なく、資材のある場所が即、建築現場となります。この 点では地球温暖化の防止に役立っています。

 土で造る家はデザインも豊富で、お望み通りの家が建てられます。柱を使わず、壁の厚みを柱代わりに利用する構造は、アメリカで盛んに建設される2X4の 住宅建築方法と共通するところがあり、柱を使わない分内部のデザインも豊富なバリエーションが可能です。スライドで紹介された世界中に存在する土に家の中 には、奇抜なデザインのものもあり、既成の建築常識を破る発想の転換が可能です。

 建築物を取り壊すときも、廃材が社会問題になっていますが、土の家では取り壊した後、ただ土に帰るだけで大量に出る建築物の廃材の心配は無用です。土を 使って、最後はまた土に帰る、これは究極の建築方法だと感心させられます。コンクリートを使った建築物は、取り壊しに時間と労力を要し廃材処理が大問題で す。

 その他、バリエーションとして、古タイヤを土の家の基礎材料や壁材料として、土で塗り固める建築も行われています。車社会の現在、使用済みになる古タイ ヤの利用法はまだ、開発されていなくて、日本などでは大量のタイヤが野積みにされ、それが時々火災を起こしたりして、社会問題になっています。その点、タ イは資源の再利用が盛んで、古タイヤなどもかなりの再生をしているようです。ゴミ箱などに再生されたものを見ると、タイ人の手先器用さに感心させられま す。古タイヤでできた家は、丸みのある壁が出来上がって、直角で切り取られた建築を見飽きている目には、ユニークで、住んでいる人の先取さを彷彿とさせま す。

 土の家の利点はまだまだあります。強烈な太陽が一年中照りつけるタイで、土の家が盛んに建てられているのは、断熱性に富んでいることがあります。壁はか なり厚く、強烈な太陽の熱を室内に通しません。屋根は茅葺きが多く、これもタイにはいくらでもある素材です。茅葺きは、一般的なスレートなどより、軽量で 断熱性に優れています。大きく開けられた窓からは風が間断なくとおり、快適な居住空間を作だします。

 建築費は一般住宅に比べてかなりやすく済みます。ちなみにチェンマイ大学の喫茶店は屋根の改修費を入れて合計12,3万バーツ(18万円)で出来上がり ました。欠点は、水に弱いことで、これは土台を高くして解決、強度の点で問題があることは、ブロックの積み方などに工夫をこらして、問題を解決していま す。

 これだけの予備知識を得て、実際に土の家を見学に出かけました。

 場所はチェンマイから40分くらいのところにあるメーリムの先です。今回のセミナーに集まった面々は、この喫茶店の常連で、それ以外は我々夫婦だけでし た。欧米人も何組か参加しています。世界中で環境破壊が叫ばれている当節、土の家は脚光を浴びている感じです。雨期の最中でしたので、大通りから入った道 は水浸しが心配されましたが無事建築現場に到着することができました。

 ここではかなり大きな会議場を兼ねた2階建ての建築が進行中です。窓枠や、柱以外はすべて粘土を固めたブロックを積み上げて壁が作られています。ブロッ クは30X25X15センチくらいの大きさのものを使用します。実際に建築現場でブロック制作の実際を体験しましたが、子供の頃のどろんこ遊びに似たとこ ろがあり、遊び心を満足されるものでした。参加者は童心に返ってどろんこの中に飛び込んで皆熱心に足踏みをしています。

 土ブロックは粘度の違う2種類の粘土、砂、おがくずを水で混ぜ合わせるだけです。動力は、足踏みする人間の力、太陽の熱だけで、電力などは一切使用しな いエコロジーさです。

 この粘土を木枠にはめて、太陽で乾かせば資材ができあがります。このブロックを積み上げる方法に工夫があり、一階部分は横に使用、強度を持たせます。2 階部分は薄い面を使用して重量を軽減します。

 この現場の建築は、大型のもので、一部屋根を支える柱は使用していますが、それも4本柱だけですし、間仕切りの壁は竹を編んだものを使用して、できるだ け人工の素材は使用しない工夫がなされています。大きく開けられた窓は、風通しがよく、完成後はエアコンなど必要ない涼しい家が想像できます。

 土の家は、すべてエコロジーを考えた建築資材を使用していますが、問題は強度で、地震がないといわれるタイだからできる建築法かもしれません。地震が多 発する日本ではまず許可にならない建築方法でしょう。

 6年間チェンマイ、バンコックに住んだ生活体験から、タイには地震がないというのは真実ではなく、地震は結構頻繁に発生していますが、規模が小さく被害 をもたらすほどにものは襲来していないというのが本当のところです。

 もう一カ所は、温泉があるという情報で出かけたメイテン(チェンマイから1時間の距離)の先、エレファントキャンプに隣接したYさんの建築現場です。建 築デザイナーのYさんが、こつこつと手作りで立てている土の家がすでに3棟完成しています。

 Yさんは、タイ人の典型的な素朴な人柄で、自分で気に入ったものをこつこつと手作りしています。現在事務所に使用する建物と、スパにしたいという建物が すでに完成しています。

 彼の土地は、温泉がわき出ているので、何と かこの温泉を利用した設備を作り上げたいという希望をもっています。源泉を見せてもらいましたが、湯量は豊富という訳ではなく、このままでは温泉施設とし ては適していない感じもしますが、近くをボーリングすればきっと豊富な温泉がわき出る予感はします。源泉のすぐそばを、渓流が流れており、きっと日本式の すてきな露天風呂ができあがるのではないかという予感がします。

 有機野菜を栽培している平田さんの農場が近くにあるので、彼はよくここを訪れて相談に乗っている様です。自分の思い通りの方法で、実験を繰り返す平田さ んは、Yさんと一脈通ずる気質を兼ね備えていますので、気長にすてきな温泉を完成してほしいものです。

 家人はすっかりこの土地が気に入り、土の家の別荘を建てたいと夢を語っています。建築費が格段にやすい土の別荘、あながち夢で終わる事はないのではない かと淡い期待を抱かせます。

 金銭にあかせて贅を尽くした豪邸がチェンマイには沢山あります。僕がよく行く、チェンマイグリーンバレーのゴルフ場に併設している住宅地には、その種の 建物が最近多く新築されています。片や辺鄙な田舎や山間部にその反対の極地ともいえる素朴な土の家が存在します。

 ベルサーユー宮殿や、ホワイトハウスと見違える豪奢な建築物を見ていると、人間の欲望は、極めるというところを知らない感じですが、そこには何か奢れる もののむなしさを感じるのは僕だけでしょうか。
 
一方素朴で、簡素な土の家を眺めていると、なぜか心が和む思いがします。こんな不便な山奥に土の別荘を建てようとする家人の計画は、あながち無謀だと一笑 に付せないのは、土の家に何か遠い昔の郷愁を感じるからかもしれません。



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