■ 467■ 3月18日 2007
「街の騒音」

昨日の朝、ベランダに蝉が一匹死んでいました。そういえば最夏期が間もなくのバンコクは、今蝉が盛んに鳴いています。
蝉の鳴き声に喚起されて、街にはそれぞれ違った音があることに気づき街の騒音について考えてみました。日本が醤油の香り、タイはナンプラーの、香港が中華
油の香りがするといわれるように、音もその街独特のものが存在するのです。
不思議なことにバンコクの蝉は夜中に鳴きます。日中は全く鳴き声が聞こえません。さすが蝉もバンコクの3月の暑さには閉口して、夕方や、涼しい明け方短い
時間だけ激しく鳴いて後は静寂を保っています。朝は6時、うすぼんやりと空が白む頃に鳴き出しますが、太陽が顔を出す前には鳴き止みます。その後は、雀の
鳴き声や犬の遠吠えなどは聞こえますが、蝉は静まり返ったままです。そして日中は、雀やその他の小鳥の鳴き声も、犬さえもそれほど吠えず、バンコクの街は
結構静かです。バンコクでは、小動物は日中の暑さを避けて生きているようです。野良犬なども、日中は暑さを避けて日陰で昼寝を決め込んでおり、夜の帳が降
りると俄然元気に走り回るので危険きわまりない話です。
静寂といえば、日本の夏の蝉は「焼けつくような鳴き声」と例えられるように、炎熱の中でも一日中激しく鳴いています。その鳴き声が一瞬ぴたりと止まること
があって、そうすると暑苦しい蝉の鳴き声がとだえたのに、暑さが蝉の鳴き声の何倍にもなって感じられることがありました。
香港ではミッドレベルに住んでいましたので、裏山の蝉が一日中鳴き止むことがなく、夏の盛りを実感させられました。日本とよく似た夏の風物です。チェンマ
イでは街なかに住んでいますので、蝉の声はそれほど聞こえません。しかし、四方を取り囲む山に登ったり、山裾にあるゴルフ場に出かけたりすると、盛んに蝉
が鳴いているのを聞くことが出来ます。しかし、バンコクではアパートの窓外一面にお屋敷の木々が茂っていますが、それほどの蝉の存在を感じることがありま
せん。休日などゴルフに出かけない日は一日中窓を開け放っていますが、蝉の声が聞こえず実に静かです。
街の音といえば、近くにある学校のラウドスピーカーが一番大きな音です。今は夏休みに入ったようで、スピーカーががなり立てることはありませんが、学校に
生徒がいる時はこのスピーカーが騒音をまき散らしています。騒音と聞こえるのは僕が日本人だからで、タイの人は騒音にたいしては一応に寛大なようです。
まず、朝8時になると国旗掲揚があります。全校生徒が校庭に勢揃いして国旗掲揚が始まります。ブラスバンドが国家を吹奏することがあったり、生徒が歌を
歌ったりして国旗が揚げられますがそれほど騒音は発生しません。その後に校長先生の訓話がありますが、それはスピーカーで拡声され、あたりに響き渡りま
す。まるで、生徒だけではなくて学校の付近の住人にも聞かせる意図があるような感じです。このスピーチ、かなり長く、時には30分位続くことがあります。
静聴している生徒には、真夏は朝から強烈な太陽が照りつけるので生徒に同情したりしています。
我が家はこの校長の挨拶を合図に窓を閉め切ってエアコンをかけます。どうもタイの人は音量調節というのにおかまいなく、スピーカーは常に最大ボリュームで
ならす物だと勘違いしている節があります。車の運転でも、街なかはさすがに自重しているというか、車の渋滞が一日中続いていますので、それほどスピードを
あげられませんが、郊外に通ずる高速道路などでは常にアクセルはいっぱいに踏みこんだ車だらけで、危険極まりありません。すべて目一杯がタイ流のようで
す。
日中は比較的静かですが(会社を休んだ時や、時々チェンマイから出てくる家人の報告では)何か行事が近づいてくると再びラウドスピーカーがうるさくなりま
す。運動会などは日本の学校と同じように何週間も前から練習があり、スピーカーから音楽や生徒の放送が絶えません。時には音楽会などがあり、生徒が下手な
歌などを延々と歌っているときは、躊躇なく窓を閉めます。
校庭で行われるこのような催しは、夕方から始まることが多く、時には夜10時半くらいまでスピーカーが黙ることがない日があります。日中の暑さを避ける意
味
があるのは理解できますが、中学生くらいのクラスの生徒が夜の10時頃まで学校で騒いでおれば大問題に発展するのは日本での話で、バンコクはその点は大様
です。でも、夜中までラウドスピーカーを音量いっぱいにあげてならしているのは、いかにも隣近所にはた迷惑だとは考えますが、一向に改まる様子はありませ
ん。
では、街の騒音に鈍感かというとそうでもないという事例は結構あって、僕が今住んでいるアパートに隣接して以前ディスコがありました。このディスコは夜中
の2時頃まで営業しており、重低音を効かせた音楽がアパートを揺すっていました。家人などはとても眠れないと苦情を言っており、マネジメントに文句を言い
ました。
このディスコは突然出現したもので、こんな大道をかなり奥に入った住宅街の真ん中に作るとは、常識外です。タイでもこの種の商売は許可申請を必要とするの
ですが、なんだか基準が全くないような感じで、ある日突然周りに不釣り合いな店がオープンしたりします。住宅地の真ん中に2、3軒の店舗がある事など普通
で、不思議な感じがしていましたが、タイの移動手段は自家用車やバイクなので、別段日本にように交通至便が売り物になる訳ではないと考えると理解が出来ま
す。
アパートのマネジメントも困り果てている感じで、抗議書を市に出すというのでとサインを求められました。と、言うことは一応そういう市民の苦情を処理する
係
がもうけられているのでしょう。その効果は計り知れませんが、ディスコはその後もかなりの間営業を続けていました。僕は部屋を反対側にしてもらい、この騒
音公害から避難しましたが、別段家人ほどこの音がうるさかった訳ではありません。と、言うのも僕は右の耳が全く聞こえなくなってから幾久しく、医師からは
補聴器を勧められていますが、なんだか老人臭くいまだ補聴器は使っていません。難聴はこんなときちょっと便利です。
最近気づいたのですが、このディスコいつの間にか閉店していました。抗議が功をそうしたか、飽きっぽいタイ人が見放したかは定かではありませんが、街に叛
乱する騒音というのは、このディスコの例のごとく気にしなくなるとそれほど迷惑を被る訳ではないので、普段は無干渉になってしまいます。
騒音と、空気汚染に悩まされるバンコクですが、ちょっと大道を入ると閑静な住宅街もまだ存在します。孟母三遷の例えで、今まで学校の近くや、墓場のそば
や、商店のそばに住んだ経験がありますが、騒音という面からは学校のそばに住むのは結構勇気がいります。学校というのは結構騒音を周りにまき散らしている
ものなのです。
top