サ キさんのチェンマイ日記

                                        



ロンドンタクシー
 

  ■372■  
4月8日
 
ロンドンタクシー乗ってつくづく感心させられた。

 香港からはわずか2時間半のフライトで、バンコクに着く。飛行機の旅は快適だが、ドンムアン空港に着いてからが地獄だ。無秩序な車の洪水や、充分でない 駐車スペースなど、この空港はすでに機能障害を起こしている。

 出発した、香港のチェップラコック空港が、あまりの機能的なことと、到着したドンマンが古すぎるのでよけいそのギャップが浮き彫りになってしまって、惨 めさを感じさせる。
新空港の完成がまたれる所以だ。

 観光客の列がタクシースタンドに並び、これでは優に30分は待たされるという状況。それに、香港の気候があまりにも快適だったので、バンコクの熱気が強 烈で、その差が大きく、なんだか騒音と、湿気の中で半時間も待つ気力が失せてしまった。

 思い切って奢って、エアポートリムジンを奮発することにした。家人は、だからあなたはいつもせっかちなので、無駄な出費がかさむとはいうが、それでは、 彼女もこの喧噪の中で30分もタクシー待ちの列に並ぶ勇気と、根気があるかというと、そうではない様子で、リムジンに乗ることを承知した。

 ま、タクシーであれば200バーツで行く距離を、700バーツも払うのはばからしい限りだが、二人とも快適な香港から、乱雑なバンコクの人息れの中に 立っていると、気力が失せて、一刻も早く我が家に帰り着きたい一心で無駄遣いを決意した次第。

 チケットを買って待つこと暫し、やってきたのは、ぴかぴかのロンドンタクシーだった。30年くらい以前、ロンドンで乗って以来の再会だ。独特の車高の高 さがイギリスの気高さを醸しだして、威風堂々としている。ドアが観音開きではなくなっていたが、ちゃんと乗り込む用のステップは健在だ。

 すとんと切り立ったリアハッチのトランクは、収納充分で、自転車も車イスも楽々積み込めるとのこと。乗り込んで感じは、車内はまるで馬車に乗っているよ うな気分にさせられることだ。後部座席は2人がけ、このシートは普通の自動車と代わりがないが、その前に向かい合って跳ね上げ式の座席が2座、進行方向に 背を向けた座席の設定は、あれは馬車に乗っていた時代の遺産だと考えられて、ほほえましい限りだ。

 進行方向に背を向けて座る方法は、馬車の時代の名残と思え、この方法の座席は、香港のエアポートエクスプレスでも見られる。この車輌はイギリス式である から納得できるが、座席の背は固定されており、移動不可能。しこうして、全乗車数の半分が進行方法に背を向けて座っている勘定だ。電車が進むと、窓の景色 がどんどん遠ざかって行く感覚は、日本人にはなじまないもので、何回利用しても違和感がぬぐえない。
確か新幹線は、座席の背が回転して、好みのぴポジションで使うことができ、家族旅行などに重宝した記憶があるが・・

 香港のエアーポートエクスプレスで観察していると、東洋人は総じて、進行方向に背を向けた座り方に違和感を持つようで、あわてて乗り込んで、しばらくす ると、進行方向に正対した座席に移動しているのを目撃する。しかし、欧米人は平気で、乗り込んですぐに隣のお連れさんと愉快そうに香港の思い出などを語っ ている感じで、決して席を替わろうとしないし、最初から全く違和感を感じていないようだ。これは長い間の馬車の時代の習慣がすり込まれているのだと、一人 承知している。

 さて、ロンドンタクシー、4座席のうち、2座が進行方向に背を向けた配置で、しかも跳ね上げ式座席ということが、かなり広い空間を作り出すので、大量の 荷物を持った旅行には最適だ。日本の車では、後ろのトランクにゴルフバッグを4個も積み込むともう一杯で不便を託つことがあるが、ロンドンタクシーでは、 充分な荷物を持った多旅も快適だと推察できる次第。

 今帰ってきた香港は、昔からそのような旅行者向けにできている街で、欧米人が豪華客船で、オーシャンターミナルに着き、たくさんの荷物を持つ広東人の ポーターを従えて、ペニンスラホテルまでの数十歩の間に、はるばる来た東の端、香港の臭いをかぎ取り、センチメンタルを味わっている貴婦人や、そのまま広 九鉄道の一等コンパートメントに乗り込み、広州までの列車の旅を楽しもうという紳士、などはこういうタクシーでなければ収まりますまい。今では九龍駅は越 してしまったが、往事は、いまの時計台の場所にあり、ペニンスラホテルに歩くのと大差ない距離だった。

 機能紹介のステッカーが貼ってあり、親切にもウエーブサイドや、コンタクト先などを明示して、売り込みに熱心な様子がうかがえる。昔はイギリスの自動車 産業も隆盛を極めていたが、今では凋落の一歩で、ローバーも工場を閉鎖するというニュースもある。ロンドンタクシーの機能は世界中で需要が高いと思え、売 り込みに躍起になっている感じがする。

 たぶん、バンコクの新空港ではこのタクシーが主流になるのでは、と、考えたりしながら高速を走っているのだが、どうもエアコンの効き具合が今一だ。総じ てヨーロッパの車は、エアコンが効きにくい傾向にあったが。本国では、そんなに強烈なエアコンは必要でなく、むしろ寒くて長い冬の時期の、ヒーターのほう に研究開発の関心がいっている感じがして、いかにもイギリス的だとひとりほくそ笑んだ。死期回生の売り込みにしては、このエアコンはいただけない。日本 だったら、寒冷地に輸出する車でも、充分な冷房効果を追求しそうなものだが。

 バンコクを走るロンドンタクシー、これもバンコクでは珍しい女性ドライバーだった。感じのよい若い女性だったが、途中で道を間違えてしまったのは、それ はタイ式ユウモアーと、考えることにしよう。

ロンド ンタクシー