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「無用の長物」
■361■ 1月30日
「郷に入れば、郷に従え」のたとえのごとく、タイで生活していると、学ばなければならないことが沢山あります。
今回はちょっと趣を変えて、「トイレ」のお話です。
タイの家庭のトイレには、便器のそばに不思議ものが付いています。なんだかシャワーノズルの小型のようですが、かなりの間、使いかたが分かりませんでし
た。まず、はじめに使って見ようと勇を決したのは家人です。チェンマイの家には、
合計5箇所にトイレがあります。全てにこの不思議のシャワーの小型が付いています。
タイの友人に聞くと、これは「おしりを洗う道具」とのことです。
日本では開発にかかなり苦労を重ねたウオッシュレットですが、タイのそれは実にシンプルです。つまり水道管にホースを取付け、その先に小さなシャワーヘッ
ドをつけただけの簡単なものです。しかし、このシャワー、結句優れもので、水道の水圧を利用しておりかなり高圧であり、これを用便後うまく使うと、結構気
持ちよくおしりを綺麗に出来ます。
その後、トイレットペパーを使って水分を拭き取るのですが、その紙は備え付けの容器の中に捨てます。つまり、タイでは紙を水洗に流さないのです。このおし
りシャワー。おしりを綺麗にするというよりは、水洗に紙を流さない工夫が作り出した代物です。
タイのトイレは全て貯蔵型です。下水処理設備が完備していませんので、家庭や、大型ビルでもそれぞれの汚水貯蔵の瓶を設置してあり、それが裏庭などに埋
まっています。ここでバクテリアなどが分解する自然の処理法に頼っているのです。しかし、自然の摂理には処理能力の限界があり、何年もすると貯蔵タンクが
満タンになってしまうことがあります。そうなると、何か家中が臭っている感じになり、大型バッキュウムカーの登場となります。
家のオナーが変わったり、改装した時など、旧の排泄物まで綺麗にしようと、バッキュウムカーが、異様な臭いを振りまいてくみ取りをしているのに出会って閉
口します。しかし、そんなに頻繁ではないので、やはり膨大な経費をかけて下水処理場を建設するよりは、この方法の方がタイの実情にあっている感じです。紙
を使わなければ何十年もくみ取りの必要がないということです。
さて、このおしり洗い器、最初はその使い方がさっぱり分かりません。ものがものだけに、人に気軽に聞くわけにはいかず、独自で工夫を重ねて使用法を会得し
ました。最初は、便器に腰を下ろした姿勢で、股の間からこの容器を差し込み、おしりの付近でスイッチをおして、水を出すという方法を試みました。
水は勢いよくおしりに当たるのですが、肝心のおしりの穴の存在位置が確定できず、かなり見当違いの場所を洗っていることに気が付きました。拭き取った紙に
かすかに色が付いているのです。これでは目的を達したことにはなりません。
次に試みたのは、おしりを少し持ち上げて後ろから洗う方法です。しかし、これではホースの長さが充分でなくうまくいきません。どちらの方法も便器の周り
や、下着はびしょぬれです。苦節2週間、何度も失敗を重ねた結果、正しい使い方をマスターしました。
最初に試みた前からホースを入れるのが正しい方法だったのです。その間、自宅のトイレいや、会社の便所を水浸しにしての努力の結果です。
つまり、こうです。初めのうちはおしりの穴の存在が分からず、見当違いの場所にシャワーを浴びせていたことになります。
便座に腰掛けて探るおしりの穴の位置は、想像したよりは、結構近い位置に存在したのです。ホースをそう長く使わなくても良いのです。位置に見当をつけて、
その付近で少し上下左右に移動してみると、一箇所、何か特別の快感を関知する場所があります。それが正しいおしりの穴の存在場所だというわけです。
サキさんは、現在までウオッシュレットというものを使った経験がありません。日本では、今は、かなりのホテルやゴルフ場や、一般家庭に備え付けられていま
すが、使うことに一抹の不安があり、いつもマニュアルで済ましていました。噴水が止まらなくなったらどうしようと、いつもあらぬ不安を感じるのです。
苦節2週間、タイで取得したこの技術、次回日本に帰ったとき使ってみようと、今から期待をおおきくしていますが、
ちょっと待て。
日本のそれはオートマチックで、それほど工夫をしなくても、簡単に使えるのではないかということに気が付きました。それに、使用方法を書いた紙が貼ってあ
ることも思い出しました。そんなに苦労をしなくても、ボタンを押せば簡単に使用可能ではないかと思います。それが、日本の最新技術だと確信します。
聞くところによりますと、紙は使わなくても水洗後温風が吹き出し、乾かしてくれるということです。そうすると、またよけいな不安が頭をよぎります。温風が
高温だったら、おしりをやけどしてしまう不安はないのでしょうか。
創意工夫、失敗を重ねて複雑な技術を完成させる日本型と、
これ以上改善の余地がない、実にシンプルなタイスタイル。
どちらも、所期の目的を達してはいますが、日本型と、タイスタイルでは相当な開きがあります。何事も全自動で済まそうとする日本型と、人間側が工夫を重ね
なければ使用不可能なタイ型。人は、これを技術の発達度合いの違いとかたづけてしまいますが、興味津々なのは、タイ型ではないかと、ふとそんな考えが頭を
よぎりました。
全て全自動ではおもしろみに欠けます。しかし、日本では全自動、省力化をすすめるのに急で、すでに2足歩行で、駆け足が出来るロボットが出現していると報
道されています。近い将来は、これに家事をやらせる魂胆です。ますます技術革新をすすめる日本と、ベーシックの目的を達すればそれでよしとする、タイ型。
どちらにより人間性を感じますか。
日本のおしり洗いは、寒い季節には温水がでるという優れ物といいます。年中暑い南国では想像もできない、いたれり、つくせりの最新技術でしょうが、暑さの
なかではそのありがたさも実感出来ません。次回冬の寒いときに、日本に帰って全自動トイレットを初体験しようと、今から一人ほくそ笑んでいます。
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