サ キさんのチェンマイ日記

                                        


激がらでない」


  ■357■  
1月12日
       
 

 このところタイ料理の味付けが少し変わってきているのではないかという事実に気が付いたのは、正月にチェンマイに帰っていろいろなレストランで食事をし た結果です。

 実は、その前に、家人がビザの切り替えのため1ヶ月バンコクに滞在した時に出かけた、スクンビット界隈のタイレストランの味が、ことごとく薄味という か、辛くないというか、今までタイ料理に対して抱いていた味と少し違うのに、2人とも気が付いていました。

 今回、正月休みでチェンマイに帰って、年越しディナーを、今の首相タクシン氏が住まいするという、高級住宅地の中にあるレストランで食するために出かけ たのですが、ここでも薄味でした。名物トミアンクンのスープも辛くありません。

 こうなると、見つけるのが難しくなっている辛みの効いたタイ料理が恋しくなります。ニマンヘミンにある時計のコレクションで有名なレストランや、ホイケ ウ道路のレモンツリーなどは、結構従来の辛さを保っていますが、それすらも辛さが少し抑え気味になっているのではと、思えるようになってきました。

 試みに激辛のヤムウッセンを注文してみたのですが、それも以前のようには辛くありません。時代がそうさせているのかもしれませんが、タイ人の舌もだんだ んと変化している様です。マイルドになってしまったタイ料理は、辛さが好きなサキさんにはいささか物足りない感じがしてしようがありません。

 しかし、考えて見れば、これは世界的な傾向であるようです。ハードリカーの代表、タイ国産の「メコン・ウイスキー」もそうです。あまりのアルコール度の 強さに、あれはメチルアルコールではないかという噂があったほど強烈なウイスキーでした。従来バーボンが好きなサキさんですが、同じトウモロコシから作る ウイスキーでも、メコンはちょっと苦手です。

 2年くらい前、若き日をバンコクで過ごした知人がチェンマイに遊びにきました。タイ料理で舌鼓を打っていたのですが、なんだか、どんな加減か、2人とも メコンが飲んでみたくなりました。こんな経験は皆さんお持ちだと思いかすが、理由もなくふと思い出す、懐かしい味というものが存在するものです。あいにく このレストランはアルコール禁止でしたが、そこは知り合いのよ
しみ、特別許可をもらって近くにあるセブンイレブンで購入して、定番のソーダー割にして飲んでみました。

 しかし、これがちっとも旨くないのです。青春の思い出も何も沸いてきません。昔日、あれほど飲んだ味なのに、何の懐かしさも沸いてこないのです。むし ろ、なんだか気の抜けた、いにしえを飲んでいる感じです。2杯目を干したところで、お互いに目を合わせての了解ごとは、「旨くない」の一言でした。

 勿論、若き日をバンコクで過ごした後、日本、香港と生活の場を移すごとに、酒の味も覚えて、舌も肥えてきたのでしょうし、もう少し高級な酒の味や、雰囲 気を知ってしまったのでしょうが、若さに任せて暴飲したあの時代の雰囲気が少しも蘇ってこないのです。記憶にはあるのですが、のどがすっかり忘れ去ってい る、という、そんな状況です。そんなわけで、何年ぶりかで口にしたメコンに関しては、なんの感慨も沸きませんでし
た。

 ビールもそうです。35年前のバンコクでは「シンハー・ビアー」一色でした。マッケットシェアー90パーセント以上の独占状態でした。だからビルといえ ば「シンハー」が自動的に出てくる状態で、今のように銘柄を注文する必要もありませんでした。このシンハービール、当時アルコール度数15パーセントくら いはあったように記憶しております。コップをキンキンに冷やして、その中に氷のかけらを入れて飲むのが正当な飲み方でした。

 今でもその名残があり、時々氷を入れたコップを添えてビールが出てきます。しかし、最近のシンハーはアルコール度5度以下、現在トップシェアーを誇る 「ビアチャン」などはそれ以下のアルコール度です。氷を入れると、ただでさえ薄くなったアルコール分が、さらに薄まってしまうようで、この飲み方は今では 感心しません。昔のシンハービールはもう少し、芳醇でのどにも咆哮だったような記憶があります。ビールのこうした飲み方も、そのうち語りぐさになってしま うでしょう。


 これ皆、ハードからソフトへ、嗜好が変化した結果で、世界的な傾向です。アルコールの強いウイスキーよりビールの方が好まれる傾向は、最近のタイの特徴 で、去年発表されたビールの消費量急増国にタイが一番だとありました。

 人々があまり刺激的なものを好まなくなった結果が味付けにも影響を及ぼしているようです。だからサキさんなどはちょっと残念な気もします。昔懐かしい、 劇が辛トミヤンクンを食してみたい欲望に駆られます。

 どうも、辛いタイ料理は、今では田舎料理の代表という感じです。だから探せばチェンマイには沢山ありますし、通常のレストランや、屋台では唐辛子を始 め、いろいろな調味料がテーブルの上に用意されていますので、自分で真っ赤になるくらい唐辛子を入れて、汗をかきかき、激辛を楽しめばいいのですが、ここ での辛さは、店独自の調理の結果を言っているのです。調味料をやたらに放り込んでの味は、乱暴で、食材の持つ本来のうま味をみんな消してしまいます。

 ハードからソフトへ。味だけではなく人間もこのところ変化をきたしているように感じられます。若者がやけに落ち着いていたり、なんだか大成している感じ で、若さ任せた大冒険や、チャレンジは今風ではなくなってきている感じです。競争をさけ、孤独を好む傾向は、食べ物の味がマイルドになってきていることと 強い関係があるのではと、危惧するのは考えすぎでしょうか。

 タイ料理の味は、辛くないのが今風トレンドです。


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