サ キさんのチェンマイ日記

                                         

「隣人の死」

 ■350■ 
11月19日 2004


隣の住人、PETEが死亡していました。

と、言っても病院で死んだようで、約半月ぐらいその情報を知りませんでした。家人
も最近顔を見ないと言っていたので、非常に驚いています。彼は、チェンマイではか
なりの有名人のようで、地方紙に死亡記事が出ていました。


この人との関わり合いはかなりユニークで、普段顔を合わせると立ち話でかなり長く
話し込みました。でも自分の過去は多くを語りませんでした。経歴によりますと、ア
メリカ、フロリダのタンパに出身で、宣教師としてアフリカ、ザイール、チェンマイ
に長らく住んだとあります。サキさんがチェンマイに住んだ当初、すでに隣に8年住
んでいたということでしたので、その長さがわかります。

隣人になった時は、すでに現役を引退していましたので、年中家におりました。彼の
ユニークな点は、非常に巨漢だったので(100キロは優に超えている)、チェンマ
イの気候は苦手のようで、年中上半身裸で暮らしていた点です。総じて外国人は裸に
なるのが好きなようで、プーケットに超していった向かいのノルエー人も、裸の生活
でした。こちらは極端にやせていましたので、やせと超デブが近所に住んでいたこと
になり、ちょっとユニークな隣人でした。裸になりたい欲望があるのは、それだけ若
さに対する羨望かもしれず、しかし、胸のあばらが出た初老の老人や、100キロは
優に超える巨漢の太鼓腹などは、あまり見てくれがよくありません。

PETEはそれでも、減量を試みており、近くのアマリリンカムホテルのプールに通
っていましたし、家には本格的なジムと見違えるような器具がそろえてありました。
でも、サキさんが上がり込んだ時は、うっすらと埃をかぶっていましたので、もう使
われていなかったようです。ウエイトオーバーは足が弱くなるといいますが、2年ぐ
らい前に教会のスロープで転んで足を折ってしまいました。高齢でもあり、直りが遅
く半年もかかっていました。

それからは出不精になってしまったようで、まず外に出かけていく姿を目撃すること
はまれでした。以前は徒歩で10分くらいのTOPSスーパーマーケットに出かけて
いたのは、運動を兼ねた鍛錬だったと思われます。外国人の老人が、スーパーの袋を
ぶら下げて歩いている姿は、あまり道を歩いている人を見かけないチェンマイでは奇
異に映ったものです。

20歳後半くらいのタイ人の同居人がいました。彼が買い物などをしていたようです
が、たまには若者が運転する小さなバイクの後ろにしがみついて2人で出かけること
もありました。近くのタイ料理屋に夕食を食べに行くのだと、にっこりしていました。
この若者はカラオケが大好きでPETEたまに留守をすると、朝から一日中カラオケ
三昧でした。あまり、上手な歌とはいえず、下手のカラオケは近所迷惑でした。

年を取っての独居生活はどこか物寂しさを感じさせるもので、彼には孤独の陰がつき
まとっていました。時たま、かなり年代物のシトロエンに乗った老夫婦が訪ねてきた
り、1週間ぐらい出かけていったりはしていましたが、普段は上半身裸で玄関にイス
を持ち出し、さほど広くない庭を眺めていましたが、どんな心境で生活していたのか
と想像すると、自分の近未来の姿を見るようで、うら悲しくなってきます。

そんな、つかず離れずの関係でしたが、サキさんがバンコクに単身赴任する直前、夕
食に誘われました。都合悪く、家人がちょっと風邪気味でしたので、この誘いを断り
ましたが、今となっては夕食をともにしていれば、もう少し彼の心境なども聞き出せ
たのではと考えると残念です。

それにしても、タイの北部は欧米人の宣教師がたくさん住んでいます。サキさんのソ
イだけでも、アメリカ人2人、シンガポール人の宣教師が住んでいて、PETEのよ
うに引退した教会関係者もいます。タイ北部はかなりの山岳地帯にもキリスト教布教
の痕跡ががあり、先年訪れたアカ族の集落や、メーホンソンのダウイン族(首永族)
の居住地にも十字架をいただいた小さな教会がありました。
どうも現在のタイは北部はキリスト教が、南部はイスラム教が進出している分布図が
描けます。タイ全土ではは90パーセントが仏教徒の国ですが、首都を離れた辺境の
地は、新しい宗教の入り込む余地がまだまだあると考えていたら、バンコクの都心に
も新しいイスラム教のモスクをたくさんみます。宗教分布は現在でもかなりの流動性
を持っているようです。

老後をチェンマイで、という日本人が増えています。
どんな感情を持って毎日生活しているのかと考えると、思考が乱れます。
死期が近づいているのは誰でも一定の年齢になると自覚するものだと考えますが、そ
んなとき、遠く故郷を離れ、肉親からも見放された孤独死だけはごめん被りたいもの
です。

その点、PETEは隣人や子供に看取られて、近しい人に囲まれて病院でなくなった
と言いますが、普段の孤独な生活をみていただけに、その辺がどうも未整理のままで
残ってしまいます。




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