サ キさんのチェンマイ日記

                                         

「味比べ

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  9月1日


   
 
 バンコクとチェンマイ。この2都市はいろいろの部分でかなり違った姿を見せます。ひと月間、単身赴任でバンコクに生活し、今、所用で一週間チェンマイに 帰っています。今回はこの2都の違いを考察してみます。

 まず驚くのはバンコクが首都であり、チェンマイがタイ第二の街だということの事実。実際住んでみて分かるのですが、田舎町の様子を色濃残すこの街が第二 とすると、その他の町は一体どんな様相を見せているのか興味津々です。実際、チェンマイ以外の北部の街を訪ねると、チェンマイが大きな街であることが理解 できます。最北部の街、チェンライなどは5分も走るともう町外れという小さな町ですし、隣町のランパンなどは、街道筋、一筋だけの町です。町と町との間に は全く何もなく、草原や山林が続くだけで、家一軒見当たらないドライブが30分も続いたりします。だから地方には仕事らしいものは何もなく、大学を出た若 者は首都バンコクに集中します。これが人口のバンコク集中を招きます。タイの人口6千万人、そのうちバンコクには1千万人が住んでいるといいますから、東 京の比ではありません。

 先日、家人がバンコクの住まいを視察に訪れました。日本から弟が観光旅行に来ていた関係で、ごく一般的なタイ料理と、日本食を夕食に選んだ事情があった にしても、「バンコクの食事はまずい」、というのが家人の結論です。最初の夜はスクンビットにあるWホテルの最上階にあるタイ料理を選びました。暮れなず むバンコクの夕空を眺めながらの食事は、ムードも最高ですし、タイ舞踊を見ながらの夕食は外国人観光客にとっては忘れ得ない思い出になることでしょうが、 我々のような在住者にとっては、このタイ舞踊もいささか食傷気味と言うことになります。

 チェンマイには「カントーク」という、やはりタイ舞踊を見せながら夕食をする、レストランが数軒あります。ここは観光客や、地方からの観光客で一杯です が、何せ料理がまずいのが玉に傷です。その昔、チェンマイを含む北部地方では、客人を手厚くもてなすのが風習でした。その時代は食材も限られていたよう で、生野菜などや、豚の皮を唐揚げしたものなどが高台に乗せられて客に供せられていました。当時の食事を再現するこのカントーク、今となっては、ノスタル ジァを感じさせるだけの料理ので、日本人の口にはあまりおいしいとは感じません。

 どうも、バンコクでも、チェンマイでも、味の2極化が進んでいるように思えます。観光客用の味付けのレストランと、地元中心の店と、です。両都市とも、 観光都市ですが、観光客が好んで行くレストランは総じて味はおいしいとは思いません。だから、サキさんは地元執着型といいますか、あまり観光客が多い店や ガイドブックに載っているレストランは敬遠しています。これはチェンマイに住み出した当初、知り合いになったE君の影響も少なからずあります。彼は当時 チェンマイ大学の医学部のインターンでしたが、同級の友達からも「チェンマイ味ガイド」などと名付けた本の出版を勧められているほどの食通でした。

 独身の気軽さから、よく彼を誘って一緒に夕食に出かけました。実にチェンマイのレストランに精通しています。大学4年間と、2年のインターン生活でこん なに豊富な知識をどうして取得したのかと、その秘密を知りたくなりました。彼曰く「すべてのレストランに行った訳ではありません。先輩や、知り合いがおい しいというレストランを記憶しているだけです」とのたまう。普段から仕入れた興味津々のレストランを、サキさんと一緒の時、選んでいるだけです。タイの医 者の薄給ぶりは、このメールマガジンでも再三取り上げている話題ですが、タクシン首相の打ち出した30バーツ医療も、財源難から見直しを迫られているくら いです。

 そんな事情もあり、彼の生活費では実現不可能なレストランでの夕食をすすめられます。サキさんの財布を当てにしていたというとちょっと雰囲気が違うので すが、ま、そんな部分もあったかも知れません。「興味は達人への近道」、ということで、彼の紹介してくれるレストランの味は、期待を裏切らない秀逸なもの ばかりでした。おかげで、短期間のうちにチェンミマイでの食通になりました。

 そんな舌で味わうバンコクのタイ料理は、何かが決定的にかけています。家人も、チェンマイで長期充電中の長女も、同じ感想です。2、3日、そんな食事を 続けているうちに、原因を発見しました。それは唐辛子と、パクチーが省かれていることです。辛さとハーブが徹底的に省かれているのです。これではタイ料理 の醍醐味を半分以上放棄した味ということになります。この種の料理をタイ人は「ジュー(味がない)といって嫌い、料理と同時に出される調味料をたっぷりと 使って自分好みの味に仕上げます。五味、いや、七味を誇るタイ料理は、そば一つにしても、唐辛子、砂糖、ナンプラー(魚醤)酢、これくらいの調味料は最低 でもついてきます。タイ人を見ていると、よくもあれほどというくらい唐辛子を入れて、真っ赤になったそばをおいしそうに食べています。

 暑い国では唐辛子や香辛料は必需で、東南アジア、インドなどは香辛料の種類も内容もかなりの充実ぶりです。それに比べて、バンコクの味はンターナショナ ル・アレンジメント(万人好み)されてしまった味だといえます。

 タイ料理の神髄は屋台料理にあると、「タイの屋台料理図鑑」という一冊をものした岡本
麻理さんなどは、タイ料理を一番よく理解している日本人といえるかも知れません。


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