|
|

「バンコク美化運動」
■332■
8月9日
タクシン首相の肝いりで「バンコク美化運動」が始まります。
「脱、発展途上国」を目指し、7年後の国王誕生日までにバンコクを清潔で、緑あふれる街
に変身させるとタクシン首相が宣言しました。名実共に先進国の仲間入りを果たそうという
計画です。この、意気込みは評価できると思いますが、手本にするのがシンガポールやオー
ストラリアのだというだというところがちょっと気になります。きれいな町並みを維持する
ために、両手に余るような規制が設けられては、バンコクの活力が失われてしまわないかと
心配です。
確かにシンガポールなどは、飛行場を降り立ったときから、なんだか東南アジアの街に到
着したのとはちょっと違った感じを受けます。「公園都市」を標榜するだけあって、街は緑
に溢れ、道路は整備され、計画的な町並みと相まって、清潔な感じが溢れています。言葉も
そうで、独特のイントネーションをもった話し方は、この街の雰囲気を一種独特のものにし
ています。すべてがきれいで、計画的で、整然としており、都会としての欠点が見えません
。
しかし、完璧を期するあまり、このきれいさの裏には徹底した規制や禁止事項があります。
ポイ捨てなどの罰則で、街を掃き清める罰を科せられた人の集団を見たことがあります。何
となく照れ隠しのような顔をして、作業をしていました。みんなに見せしめの目的もあり、
こんな方法を取っているのです。シンガポールでの禁止マークを集めたT−シャツを買い求
めたことがありましたが、胸と背中の部分を使って、丸い禁止マークが埋め尽くしていまし
た。これででも全部ではないと聞いてあきれかえりました。
シンガポールの美観は、禁止事項で維持されているといいます。それでも、一番の繁華街
オーチャド道路などを歩いている限りは気がつきませんが、中華街やインド人街にはかなり
汚い場所があります。現にこの街で生活していた中国人に聞くと、シンガポールは本音と建
前がかなり違っていて政府が音頭をとってもそれに従わない人もかなりいるとのことです。
シンガポールの建国の父リー・クワンユーは中国客家(はっか)出身ですが、この民族は香
港にも沢山住んでいます。商売感覚に長けていて、世界各国に住まいするという客家は公徳
心に欠ける部分がある聞ときます。香港の無秩序がスラムを生み出したことを反面教師とし
て、清潔な公園都市を作り出したということです。近くに格好の見本があるのですから、理
想を現実化するのはそう難しいことでもなかったようです。それが規制の山を作り出したの
です。
しかし、この清潔な都市は、人間が生活していく上では息苦しさを感じさせるのも事実で
す。1997年、香港が中国に返還される際に、香港人が移民先に選んだのはカナダ、オー
ストラリアが最優先でした。同じ中華圏にあるシンガポールは人気薄で、最後になって受け
入れを発表したシンガポールの移民枠2万5千人は定員に満たなかったと記憶しています。
それだけ香港人もシンガポールは住みづらい街だということを知っていたことになります。
社員の中に移民先をシンガポールに定めた人がいました。1979年を過ぎた翌年、香港
の会社を訪ねて来ましたが、住み易さの問題は言葉を濁していました。中国返還時に知った
ことですが、シンガポールでは年間2万5千人くらいの人が海外に移民して行くという事実
れは人口がなかなか増えないシンガポールに取っては由々しき問題だと考えられます。政府
の肝いりで、高学齢者同士の結婚を奨励したり、3番目からの子供に高額な手当を出したり
しても、移民熱は一向にさめないようです。現にサキさんの知人も最近ニュージーランドに
移民して行きました。生まれた双子をいい環境で育てたいというのがその理由です。サキさ
んが見るにシンガポールに比して田舎国家だと思えるニュージーランドにです。理由は
「フレッシュエアー」という漠然としたものでした。
シンガポールによく比較される香港は真反対に位置するようです。規制はほとんどなく、
自由を謳歌している分、街は雑然としています。先年のSARS騒動でさすがの香港も、街が
一変して清潔になっているとの情報もありますが、それでもその清潔度はシンガポールには
比べようもありません。しかし、その分人間が生き生きしており、我が社のシンガポール人
のスタッフなどは香港人のバイタリティーにノックアウトされて、すごすごと母国に帰った
り、黎明期の中国大陸に職場を変えたりしていました。
さて、一方バンコク。どんなマスタープランをもって街の美化運動を進めるのでしょうか。
かなり前にアジア大会開催時、時のバンコク都知事、チャムロン氏の肝いりでかなり街がき
れいになったことが思い出されます。現在の総理タクシンの政治の師匠だとも聞きます。ど
んな発想が根源にあるにしても、それがシンガポールをお手本にしているのであれば、この
街の活気まで失われてしまうのではないかとちょっと心配になる運動ではあります。
top
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|