サ キさんのチェンマイ日記

                                         

男の純情」

 ■328■
  

 7月11日


  一体、人はいつまで純情を持ち続けることが出来るのか・・・最近気になって仕方がないことの一
つです。

 昔、男純情の・・・という歌がはやった時代がありますが、純情はその時代からヅーッと前、多分有史以来から、人ははかない純情を持ち続けていただろうと の推測できます。そんな疑問を持ち続けていたところ、最近読んだ「セラー服とエッフェル塔」鹿島茂著、文芸文庫にこんな件がありました。引用します。

・・・ヒトのオスがメスの乳房そのものにひかれるのは、ヒトがネオテーニ(幼いままに大きくなってしまう幼児成熟)的な性格を持っているためだという新説 を披露している。すなわち、ヒトの赤ん坊は一人で歩けず、餌も一人で手に入れる事の出来ない「寄る辺ない」時間が、サルに比べて非常に長い。さらに、青年 に達しても、サルなどよりも、子供っぽい精神を多分に引きずっている。いいかえれば、体は成熟していても心は母親の乳房が好きな赤ん坊のままなのだ。

 女性の思考はさて置き、ここでの考察はあくまで男に関してのものです。男であるサキさんには、この年になるまで女性の考えていることの大半は理解の範囲 を超えたものがあり、これは永遠の謎といっても良いと考えますし、だからいつまでたっても異性に対する興味が尽きないのかもしれません。女性に比して男は いつまでたっても純情な少年の心を持ち続けるものだと痛感する事件に出会いました。

 香港時代のゴルフ仲間が、チェンマイにゴルフツアーにやって来ました。総勢7名、古くからの友達は気のおけないのが良く、どんなことでも歯に衣を着せず に本音で話し合えるところが素敵です。何年離れていても無沙汰の挨拶や、近況報告など後回しにして、すぐに今の時点の話題に入っていけるのが真の友達のい いところです。この仲間はたびたびチェンマイゴルフに出かけてきて、その中の一人などはホールインワンを達成し、生涯忘れ得ぬ思い出が出来たと喜んでいま すし、ほかのもう一人などは、昨年5回もチェンマイでゴルフをしています。

今では香港―チェンマイ直行便が就航していますので、香港からだと3時間足らずでチェンマイに着きます。到着時間が午後1時半前ですので、その日はワンラ ウンドし、次のからは毎日ゴルフ、マッサージ、夕食と毎日同じスケジュールをこなしています。数日、同じスケジュールで動いていても飽きないのは生来のゴ ルフ好きの証拠です。だから街の様子など全く興味がなく、ホテルとゴルフ場の往復する毎日を過ごして帰っていくのが毎回決まった日程です。

幸いチェンマイには4カ所のゴルフ場があるので飽きはしません。

 そんなゴルフ三昧の一日、ラウンドを終わってタイビール・シンハーを飲んでいた時のことです。「今日付いたキャディーが、非常に感じが良く、なんだかプ レーに専念できなかった」という感想を一人がいい出しました。ふだんその手の話が全く出ないご仁からですので、一同驚きました。ランド中はそんな話は全く なく、終わってからの話ですので、どんな雰囲気のキャディーか思い出せません。

それにタイのキャディーは日焼けを嫌って、かなり重装備で、長袖の手の甲などは手甲羈絆ならず、甲の部分を長くのばした制服で手の日焼けを防ぎ、顔は手ぬ ぐいなどで覆い、まるで覆面をしているような出で立ちですので表情など全く覗くことが出来ません。これを一説では覆面美人というそうですが。それにこのご 仁、タイ語が全く話せない筈で、一体どうしてコミニュニケーションを取ったのかも不明です。プレー後の気楽な軽口の中の話で、皆、歯に衣を着せない辛辣さ もあって、話が尖ってきます。

「いや、言葉など必要はない。目と目で充分意思は通ずる」
「え、そうすると相手はあなたの気持ちを理解していたの?」
「いや、そこまでは・・・・・」
「と、するとこれは完全にプラトニックの範疇入るのでは・・」
「そう、最後のあたりはもう顔を見るのもなんだか面映く、目もあわせなかった」
「ボールを拭いてもらって手渡しされるときなど、手の先に電流が流れるようだった・・」
一同「エ、エ、エ、」

幸せそうに語るご仁を皆が揶揄します。「今からでも遅くない、追っかけていて写真を撮
るべき」

「いや、名前を聞いておくべき」
「携帯の番号がいい」
「背番号は何番だったかなー」
「どんな雰囲気の子?」

同伴競技者も、思わぬ告白に一所懸命に思い出そうと必至です。しばし、プレーの話などそっちのけで話題がキャディーのことばかりになります。

 話は全く純情そのものです。50歳を過ぎた男でもこんな感情を持っているものです。それもかなり真剣に考えているものです。

サキさんにも経験があります。古くは小学校の体育の先生に抱いた淡いあこがれ。中学時代は初恋の人に見事に振られた苦い思いで。高校時代はあまりにもの片 思いにキューピットが現れ、仲介むなしくこれも失恋で終わったしまった苦い出来ごと。そのため大学受験勉強に力が入らず、成績が下がったのを見かねたこの キューピットが、心配のあまり、ある日城跡に呼び出されて

「恋はこの後何度もチャンスはある。今、大切なのは受験に備える頑張りだ。彼女のことはきっぱりと忘れ手、受験に専念すべきだ」
と叱正してくれ、強い意志で京都大学に入学した親友。

こんな青春のほろ苦い思い出も遠い昔日になってしまいましたが、これすべて男純情がなせるものだと思います。

 そういえば、サキさんに叱声と励ましをくれたF 君はその後どうしているだろう。あくまで勉強一途だった君の消息はその後、京都でバイクのお尻に可愛い半玉を乗せて、京の街を疾走していたという消息を人 づてに聞いてから、もうどれだけ時間が流れたとこだろう。キャディー話から、こんな自分の古い過去の思いでが瞬時に浮かんできまます。

 この話題はその日一日で終わりましたが、一同、皆、言葉ではご仁を揶揄してはいますが、心の中に一つや二つこの種の、忘れ得ぬ思いで話は秘めている筈で す。

  男の純情。いつまでも大切にしたいものです。


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