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「燃える火炎樹」
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月4日 2003
薫風香る5月というわけにはいきませんが、ここチェンマイも今年の5月は、結構さわやかです。それにこの季節には珍しい雨が降ったりして、それが涼風を
よんでくれ、一陣の強風がそこら中のゴミを運んできたり、庭のマイヨムの実を大量に落としたりしても、それほど腹が立ちません。最近は感情の起伏も少なく
なって、物事に腹を立てなくなったのは、チェンマイ生活の功罪どちらだろうかとふと考え込んでしまうことが度々です。相変わらずの乱暴運転だけは許せませ
んが。
庭の2本の木は、若葉をいっぱいにつけて、こんもりとした日陰を作り出してくれています。1、2月の寒い季節には(?)すべての葉を落と
し、青空が顔をのぞかせていることを思い出すと、季節は確実に変わっているのが実感されます。常夏と思っていたこの地の、季節の変化が実感できるように
なってきたことは、それだけチェンマイ生活も板についてきた証だと一寸ほくそえんだりしています。
街は花がいっぱいでそれが盛りを迎えた感じで、まさに「花の都」を演出してくれています。
家の前の排水溝にカエルが住み着いたようで、これがかなり高音でうるさく泣き叫ぶので、家人などは夜眠ることができないと、こぼしたりして
いますが、田園に住まいする風情のごとく、これが適当な子守歌だと意識の転換をしなくてはなりますまい。この痩せカエル、体長は3センチくらいのちびのく
せに、その鳴き声は大きく、想像だけで言えば、体長10センチはあろうと思われる鳴き声を上げます。
名を「ウンアーン」というこのカエル、昼間でも鳴き声はやまず、周りに生活音が全くないこのソイ(小道)では、唯一の鳴き声です。
何かの折りに、この鳴き声がふと止まった瞬間には、周りはシーンとしてカエルの鳴き声のうるささが一層実感できます。
一寸余興にこのカエルを釣り上げて駆除しようかなと考えたりしますが、ここは敬虔な仏教徒の街、無益な殺生などしない方がよいと考えを変えま
した。そういえば、3年前この家に住みだした当初、裏庭に一匹のガマガエルが住み着いていました。雑草生い茂る庭に、使わなくなった植木鉢が伏せてあった
のですが、その中にガマガエルは生活していました。夜になったら、その割れ目からはい出して、庭を徘徊しているようです。よく観察すると、かなり高齢と見
えて、行動力も鈍い感じです。いたずらに植木鉢を隠してしまうと、そのうちに庭の隅に小さな穴をうがち、その中にお尻を突っ込んで何か瞑想する高僧のごと
くの風情。ガマガエルも日中の暑さにたまりかねて、お尻を冷却しているのだと、面白く観察しました。
この屋の大家の息子E君は、この年の気温を25年来の暑さだといって、これはたまらんとばかり、翌年はこの時期日本に避難していましたが、
この何年ぶりかの異常気象説、今年と比べるとうなずけるような気もします。
裏庭は四方を高い塀に囲まれていて逃げ口がないということで、結局このガマガエルはこのままでは食べ物がなくなって死んでしまうと、心優し
いE君が、ちりとりですくい取って表へ逃がしてやりました。この国の人は殺生をすることを極度に嫌い、野良犬でも近所で何となく飼われていて、結構幸せな
一生を終えるようです。そう言えばこの大ガマガエル、一声も鳴き声をあげませんでした。痩せのちびはかまびすしい、とは言いますが、大物は物静かでどこか
雰囲気までが違います。小物はちょろちょろとして、うるさく泣き叫びます。この違い、何か人間世界とどこか共通する部分があるように思われて仕方がないの
ですが。
相変わらず勢いが止まらないSARS
、香港からの便りでも、峠を越えたという観測があったり、イヤまだこれから大爆発しそうだと言う意見があったりで、行き先が全く見えない感じです。そうい
えば香港では百花総攬の花の季節を感じたことはありませんでした。唯一、この季節になると街路樹として植えられている火炎樹が、真っ赤な花を一杯つけて、
普段はあまり色彩のない街に、燃えるような色を提供してくれていましたが、今年も変わらず花をつけていることでしようが、この風邪騒ぎでは、人々は花の勢
いを愛でる余裕もないだろうと、同情したりしています。
それに比して、チェンマイは花の最盛期で、街中色彩であふれかえっています。火炎樹なども真っ赤な花を咲かせていますが、周りの色彩の多さ
にちょっと沈んだ感じで、香港のような強烈な印象とは一寸違った感じに見えます。ただこの花は、香港のようにコンクリートジャングルにぽつんと咲いて、強
烈な赤色を鼓舞するよりは、近所のハーブ研究所の緑の芝生に、花の赤、建物の白、芝生の緑と色を対比させるがごとく花を咲かせているのが絶景です。思い出
すのは、若葉のトンネルを真っ赤なトラックが走り出して来る、ダブリンのギネスの工場のあたりの今の時期の色彩とさわやかな気候。チェンマイの火炎樹の赤
と新緑のコントラストは、30年も前に見た、ヨーロッパの色彩を久しぶりに彷彿とさせてくれます。
火炎樹
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